きれいな青空が広がる初夏の休日。
飲むには少し早いけど、まだ涼しい昼、静かな書斎で1杯のワインをいただきました。
控えめで凛とした大人のワイン。
テロワールとしてのニュイ・サン・ジョルジュ
コート・ド・ニュイの最南端に位置するニュイ・サン・ジョルジュは、ブルゴーニュの中でも特に多様性に富んだテロワールを持つ村として知られています。
村の北部はヴォーヌ・ロマネに隣接し、比較的柔らかくしなやかなワインを生む一方、南部はより骨太で野性味を感じさせるスタイルが主流です。
「オー・ラ・ヴィエール」は北寄り、ヴォーヌ側に位置する1級畑で、しなやかさと張りのある酸、ミネラルの緊張感を併せ持つスタイルが魅力とされています。
ジャン・グリヴォという造り手
ジャン・グリヴォはヴォーヌ・ロマネを拠点とする名門ドメーヌで、クラシカルでありながら現代的な清潔さと精密さを備えたワイン造りで知られています。
完全除梗によるクリーンな果実味、過度な抽出を避けた繊細な抽出、樽使いも控えめで、テロワールそのものの声を聞かせてくれる造り手です。
そのスタイルは、特にミネラル感と酸の美しさを軸にした、静かながらも芯のあるピノ・ノワールに結実します。
初回のテイスティング(抜栓直後)

色はやや黄みを帯びたルビー。香りは黒系果実に始まり、やがてきれいな赤系ベリーへと移り変わる。味わいは控えめな果実味にきれいな酸とミネラル感、滑らかなタンニンがバランスよく構成されており、余韻も穏やかに溶けていくような印象。
派手さはないが、丁寧に組み立てられた静謐な美しさを感じさせるワインです。
13日目の再テイスティング(コラヴァン使用、14度セラー保存)

今日の札幌は少し涼しく、まだクーラーはいらない。
階下のリビングからは、ピアノの練習音がゆるやかに聞こえてきます。
書斎。ヒバが甘く香るサウナ室で、2週間ぶりの休日の午前、読書をしながら先日のワインを静かにいただきます。

色は少し落ち着きを増し、縁にわずかにオレンジを帯びたルビー色。香りはレンズを通して立ち上がってくるような凝縮感のある赤系果実とフローラルな華やかな香り、背後にかすかに感じる木の香りが奥行きを持たせます。味わいは、しっかりとした酸とミネラルが基調。そこに若い果実の輪郭が滑らかに溶け込み、柔らかいタンニンと苦味が最後を引き締めます。そして余韻の最後に、まるで梅干しの後に訪れるような、ほんのりとした甘みが口中に残るのが印象的です。
非常に綺麗に研ぎ澄まされた果実と、ふわりと立ち上がる華やかな香り。
だが口に含むと一転して、味わいは静謐で、酸とミネラルがすっと背筋を伸ばす。
その構成の美しさゆえか、最後にふっと残るのは、静かに立ち上がるような甘さ。
まるで張り詰めた静寂のあとに、小さな余韻が灯るような——そんな逆説的な印象を残す、魅力的なワインだと思いました。
2週間ぶりの休日に、静かに、そして怠惰に、読書とワインで過ごす午前。そこにこのワインの、華やかで静謐で、几帳面とも言えるような大人っぽさが、不思議とぴたりと寄り添います。
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