華やかでパワフルな、モダン・ヴォルネイの表情
「ヴォルネイ」とは
ヴォルネイは、ブルゴーニュ地方のコート・ド・ボーヌに位置する村です。すぐ隣にあるポマールが力強さで知られるのに対し、ヴォルネイのピノ・ノワールは、繊細でやわらかく、気品のある味わいが特徴です。
その理由のひとつは、土壌にあります。石灰質を多く含む泥灰土で、水はけがよく、樹は自然と根を深く伸ばします。粘土や鉄分が少ないため、果実味は過剰にならず、酸がきれいに残り、すっきりとしたミネラル感が感じられるワインになります。
また、畑は多くが東〜南東向きの緩やかな斜面にあり、日照はやわらかく、風通しもよいため、ブドウが健やかに育ちます。果実がゆっくりと熟し、焼けることなく酸を保つ環境です。
こうした自然条件が、ヴォルネイのワインに軽やかさと伸びのある酸、やわらかくシルキーな口当たりをもたらしています。
ニコラ・ロシニョール
ニコラ・ロシニョールは、ヴォルネイを拠点にする注目の生産者のひとりです。もともとはネゴシアンとしてスタートし、その後自社畑を増やしながら、現在では高品質なブドウを用いた多彩なワインを手がけています。
彼のスタイルは、果実味をしっかりと引き出しつつ、樽の風味で味わいに厚みと奥行きを加えるものです。ブドウはよく熟したものを用い、比較的高めの新樽比率で仕上げることで、若いうちからも十分に楽しめるワインを造っています。
クラシックなブルゴーニュの繊細さと、現代的な飲みごたえのバランスが取れており、ヴォルネイのエレガンスに、ほどよい主張が加わった印象です。
ヴォルネイ・オリジン ニコラ・ロシニョール 2020
グラスに注ぐと、やや深みのあるルビー色。透明感はありながら、しっかりとした色調で、落ち着いた雰囲気があります。
香りは、ラズベリーやチェリーなどの赤い果実に、樽の風味が穏やかに溶け込んでいます。強く主張するわけではありませんが、ワインに奥行きと落ち着きをもたらしています。
口に含むと、果実味の厚みと酸のバランスが印象的です。しっかりとした果実の広がりと、なめらかな酸、そして繊細なタンニンがまとまりよく感じられます。スモーキーな風味が後味にに残り、全体の印象を引き締めています。
少し冷やし気味で飲むと、樽の要素が控えめになり、果実味と酸の輪郭がより際立ちます。温度によって表情が変わるため、色々な表情を楽しめます。

ヴォルネイらしい繊細さも内包しつつ、これは「香りと厚み」で飲ませるタイプ。
ゆったりと時間を取り、少し温度が上がってからの変化を楽しむのも一興。
私はどちらかといえば、よりピュアで静謐なスタイルに惹かれることが多いけれど、こうして個性の異なるヴォルネイに触れると、この村の懐の深さを改めて実感します。
今この瞬間から感じられる華やかさと、時間とともに現れる複雑さ。
その両方が詰まった、今を生きるヴォルネイです。
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