平日の夜、仕事を終えてシャワーを浴び、静かな書斎へ向かう。
デスクランプの柔らかな光が、グラスの中のルビー色を照らす。
ふわりと立ち上がる可憐な果実の香りに、一日の疲れがスッと解けていく。
ヴォーヌ・ロマネという特別な村
ブルゴーニュ、コート・ど・ニュイ地区の中心に位置するヴォーヌ・ロマネは、特級畑ロマネ・コンティを擁する、世界的に名高いワインの産地です。
標高約250から300mのなだらかな斜面に広がる畑は、石灰質と粘土質が複雑に入り組み、繊細さと気品を併せ持つピノ・ノワールを生み出します。
ワインはしばしば「芳香の女王」とも呼ばれ、香りのエレガンスと滑らかな舌触りが特徴です。
ヴァンサン・ルグー
ヴァンサン・ルグーは、かつてロマネ・コンティ社(DRC)に勤務した経験を持つ醸造家です。
その後、父親からドメーヌを引き継ぎ、2008年に自らのドメーヌを創業しました。
有機農法を採用し、収穫は手積みで行い、徹底した選果を行います。
醸造は全房発酵を取り入れ、畑由来の野生酵母のみで発酵を行います。
熟成は新樽の使用を控えめにし、果実本来の風味とテロワールの表現を重視しています。
テイスティング
透明感のある綺麗なルビー色。
グラスからはいちごやラズベリーの瑞々しい可憐な果実の香りが立ち上がります。ほんのりと清涼感のあるハーブの香りが寄り添います。
味わいは引き締まった酸がワインの骨格を作り、控えめに溶け込んだ甘さが優しく広がります。タンニンは繊細で滑らかな口当たり。軽やかでしなやかな印象が際立ちます。
酸が伸びやかに続き、柔らかなミネラル感を経て、淡い甘みを残して消えていきます。爽やかで軽やかな余韻は、夏の夜にぴったりです。
ペアリング ミニトマトのピクルス

合わせたのはトマトのピクルス。
ワインの酸とトマトの酸味が共鳴し、フレッシュさが引き立ちます。
この組み合わせて普段は控えめに溶け込むタンニンが上品に際立ち、その後に訪れる果実の甘さを引き立てます。
全房発酵で生まれるチャーミングな果実味
全房発酵というと、青っぽい茎の香りやスパイス感を連想しがちです。
しかし、ヴァンサン・ルグーのワインは、そのイメージを覆します。
果梗までしっかりと熟した房だけを丁寧に選び、発酵前に長いマセレーション(低温で果皮や種を果汁と浸けおくこと)を行うことで、ワインに丸みとフルーティーさをもたらします。
その結果、全房発酵由来の立体感がありつつも、可憐で甘やかな果実の香りが前面に出た、チャーミングなワインが出来上がるのです。
2022年ヴァンサン・ルグーのヴォーヌ・ロマネは、チャーミングな果実の香りと引き締まった酸、繊細なタンニン、そして軽やかな余韻が魅力の1本でした。涼やかで可憐、まさに夏の夜にピッタリなワインです。
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