土曜日の昼下がり。
一週間の仕事を終え、書斎の椅子に深く腰を下ろす。
窓から射し込む午後の光の中、スピーカーから流れるのはROSEの「Toxic Till The End」。
グラスに注ぐのはシャンボール・ミュジニー レ・クラ 2022 アントナン・ギヨン。
シャンボール・ミュジニー
シャンボール・ミュジニーはブルゴーニュでも特に「女性的な優美さ」で知られる村です。
標高は250〜300mと比較的高く、冷涼な気候がブドウの酸を保ちやすいという特徴があります。
土壌は石灰質を多く含む粘土石灰質で、特に丘陵上部は石灰岩が露出し亀裂が多く、水はけが良いため、ブドウの根が深くまで成長し、ミネラル感が強くなる傾向があります。
レ・クラという畑
レ・クラ(Les Cras)は、シャンボール・ミュジニー村の北東、村の最上部に位置する1級畑です。
“Cras”とは古フランス語で「砕けた石灰岩」を意味し、表土は薄く、石灰質の礫が多く含まれます。
標高の高さと冷涼な気候が酸を保持し、石灰岩質の土壌がブドウにミネラル感を与えます。
その結果、伸びやかな酸と明確なミネラル感、しなやかな骨格を持つワインが生まれます。
アントナン・ギヨン
造り手はコート・ド・ボーヌのサヴィニー・レ・ボーヌ村を拠点とするアントナン・ギヨン。
ビオロジック栽培を実践し、収穫は全て手摘みで行い、健全な果実だけを選び抜きます。
発酵は約20日間、ピジャージュ(発酵中に浮かび上がる果帽を棒などで押し沈め、色や香り、渋みを穏やかに引き出す操作)主体でやさしく抽出します。
熟成は新樽30%で16ヶ月。樽香を控えめにし、果実とテロワール(土壌・気候・環境)の表現を重視しています。
その結果、ギヨンのワインは過度な濃縮や樽の主張はなく、土地の声がそのまま響く透明感のあるスタイルが特徴となっています。
テイスティング

グラスに注ぐと、透明感のあるきれいなルビー色。
甘やかな赤黒系果実の香りが上品に立ち上がります。奥に微かにハーブの涼やかなニュアンス。
口当たりはまろやかな酸が主体で、控えめな甘み、繊細で非常に滑らかなタンニンが広がります。
余韻はミネラル感を残しながらほのかな甘みとともに軽やかに消えていきます。
お供は塩漬けオリーブと鴨のスモーク。
ワインの酸・ミネラル感と鴨のスモーク香が双方の風味を引き立て、オリーブの塩味が余韻を引き締めます。
真夏の昼下がり、ワインの豊かな果実の風味と軽やかな余韻を楽しむ仕事上がりのひととき。今日仕事で出会った人たちに自然と感謝の気持ちが溢れてきます。
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